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 狂ったように止まらない時がある。
 夜から始まって朝の近付く頃まで。声が枯れ果てただ身体が痙攣するだけになっても。体液が彼の髪にこびりつき(彼はそれを切り落としてしまう)、舌は乾き、到底美しくはなく愛情がどうこうとは言い難い状態になっても、我々は互いを求める。その酷い疲労と特有の匂い。彼を愛しているのではなく、自分はただ性器と体液に執着しているだけなのではないかと錯覚するほどに何度も繰り返す。
 もう無理だと思っても、伸ばされる指に自分は応え、そしてまた別の瞬間暴力的に彼を組み伏せる。彼は抗わない。
 自分も彼も、少し微笑んでいるようでもあり、悲しんでいるようにも見える。
「身体が子孫を残そうとしているのかもしれない」
 いつか彼は冗談めいてそう言った。たぶん「死期が近いのを感じ取って」とかいう前提の話だったのだろうけれど、彼はそこを省略した。自分にとっても、とりわけ聞きたい種類の話ではなかったので黙っていた。そういう点で我々の感性はいつも一致している。

 我々は互いに手をつないでいる。
 そして空いたもう片方の手で、死と手を取り合っている。
 これは裏切りにはならない。双方がそれを知っているからだ。

 ただこれほどひたむきに声を上げ、必死の力で背に取りすがり、強い瞳で見上げてくる彼が、死んでしまう可能性があるというのを不思議に思う。腕の中の彼はそれほどに生命力に満ちている。

 我々は時に果ての見えないほど抱き合う事がある。そんな場合は自分も彼も、少し微笑んでいるようでもあり、悲しんでいるようにも見える。












※注:わりと読後感ぶちこわし系あとがき

「死期が近い」と打とうとしたら
「式が近い」と出たので、
この変換機能とは話が合いそうだと思った。

シリかルかどっちの一人称か分からない話は全部、
どっちの視点でもいい話です。

死とシリとルの3人で輪になって
くるくる回っている光景を想像したら
自分で笑ってしまいました。もう台無し。
「仲良し!」「仲良し!」
できれば死神2人とシリル、横一列でイメージお願いしますよ。

2005/10/24


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