103 用があって、以前アメリカへ行ったとき一度だけ痴漢にあった事があるという話をルーピンはした。 いつもと変わりない2人だけの昼食の席での事だった。昼食のデザートに痴漢の話を始められたシリウスは2、3度瞬きをする。 公園のベンチで目を閉じて日光浴兼うたた寝をしていた彼は、最初それを物取りの類であると考えたらしい。 「けれど私が目を開けて相手と視線を合わせても、財布を探る手は止まない。そのうちにどう考えても財布を捜しているのではない動作になってきて、私はその人にやめてくれと言ったんだ」 「・・・・・・」 「相手は去った。私は起こった出来事が理解できなくてしばらく呆然としていた。だって、今より若かったとはいえこの私だよ?どこからどう見ても男である上に骨と皮ばかりだ。容色だって取り立てて優れているところは何もない。そう、君に比べたら木の板に穴が3つあるようなものだ」 「・・・・・・」 「そんな骨ばった男の体を撫でまわしてどういう楽しさがあるのか、追いかけて尋ねようかと思ったくらいだ。私の理解の……」 「・・・・・・」 そこでルーピンは先ほどから急に返答しなくなったシリウスに気付き、しばらく沈黙する。 「ああ、ええと、骨ばった「赤の他人の」男の体を撫でまわして、どういう楽しさがあるのかは、私の理解の外にある、という話だ」 「……細やかな心遣いありがとうリーマス。だが別にそれしきで不愉快になったりはしない」 「それは良かった。私はあんまり驚いたので、珍しくこの話を誰かにしたいと思った。「信じられない!!」と一緒に驚いて、笑ってほしかったんだ。ところがそのときは時期が悪くて、私にはそんな話が出来る友人は1人もいなかった。それに気付いて少し悲しくなった」 「・・・・・・」 「だから今この話を急に思い出して、君に披露しているという訳なんだけれど」 どうも私が昔に期待していたような反応が返ってこない。と首を捻るルーピンにシリウスは笑って答える。 「済まないリーマス、俺はその話を聞くのに理想的な相手ではないようだ」 そして彼は、それどころかお前が痴漢に遭ったと考えるとなぜか不愉快な気持ちになる。加えて言うなら「どう考えても財布を捜しているのではない動作」というのが具体的にどんな動作なのか、尋ねたいのを我慢しているんだが。と少しづつ真顔になりながら付け加えた。 ルーピンは昔に痴漢に遭ったときと同程度驚き、 「これはそういう話ではない」 と慌てて説明した。 しかし覆水盆にかえらず、議論は夕食まで続いた。 「俺のリーマスからその汚い手を離せ」 (バキューン)←ウィンクの音 を1度やってみたかったのですが。 ……まあいいです。 でもいくらその筋の痴漢でも 先生は被害にあわないと思う。 痴漢の目にもとまらないほど地味だから。 お好みで最後に付け足してください。 「少なくとも現在のルーピンには、 議論できる友人が1人はいるということで、 真に結構な話だったのだが 本人はそれどころではなかった。」 2005/06/03 BACK |