酒。そして2人


 
 酒のことは好きでも嫌いでもない。別段美味しいとも不味いとも思わないし、高いとも安いとも言えない。なのでここ10年ほどは全く縁がなかったのだが、最近では夕食の後に時折シリウスが無言でウォッカとレモンと分厚いグラス、氷を出しているのを見ると、向かいの席に座って相伴に預かるようになった。
 酒が飲みたいのではない。どちらかといえばシリウスが慎重に酒を注ぐ時の様子や、あのガラスの絞り器を神経質に扱う仕草が見たいのだ。
 なので1杯を出されるとさっそく次の作業をしてほしくなって、ペースが早まり危険ではある。
 私達は昔のような陽気な酔い方をしなくなった。それが年齢の所為であるのか過去の所為であるのかは分からない。その代わり酔ったフリをして物を言う悪癖が出来上がっていた。
 私は言う、昔みたいにジェームズの物真似をしてくれないかと。彼は驚くべき幾つかの才能(記憶力や観察力、ともかく私にはないものだ)で過去のどの場面、どの台詞でも鮮やかに再現してみせる。
 シリウスは快諾する。
「リーマス、君の泣いている理由に僕達は勝てない、けれど・・・」
 私は大声でストップをかける。私を泣かせようとしているだろうシリウス?と尋ねると彼は笑って首を傾げる。
 私は復讐の為に彼の目の前でチョコレートを食べながら酒を飲んでみせる。彼が蒼白になって「ウェッ!!やめろよリーマス」などと悲鳴を上げるのも懐かしい感じがして楽しい。強烈な味をしたロシアの酒の瓶が空になる頃には、2人はすっかり調子に乗っている。
「なあ、俺のリーマス。全てが終わったら二人で暮らさないか」
「うるさいよバカ犬。黙って飲め」
 何でお前のリーマスなんだとか。じゃあ今の暮らしというのは何なんだとか、友人に向かってバカ犬は失礼だとか。そういう事は一切言ってはいけない。どんなルール違反の発言でも馬鹿馬鹿しい冗談でも本心からの告白でも、酔っているから許される。そういう規則だ。
 次の瓶が半分くらい空になる頃には、私達は歩いて寝室まで行けないような状態になっている。仕方がないので少しでも余力の残った方がもう片方を引きずってソファまで辿り着き、2人して知恵の輪のように絡まって眠りに落ちる。
 翌日の大変な事といったら筆舌に尽くしがたい。

 それでもシリウスが無言でウォッカとレモンと分厚いグラス、氷を出しているのを見ると、私はついつい向かいの席に座ってしまうのだ。  



先生が「ここ10年ほどは全く縁がなかった」と言っているのは
10年より前は物凄く縁があったという事です(笑)先生の嘘の
付き方の基本。 (出来る限り嘘は言わない、だがミスリーディングの鬼)

私は酒は好きです。とても。趣味がなかったら、酒で人生駄目にしていたと思う。
おとなしい飲み方なのでそんなに他人には迷惑をかけていないと思うのですけど、
ひっそり自宅の一部を破壊したりしているので酒による金銭的損失は大きい。
ええと100万は越えてない。という感じ。

友人と二人でウォッカ1本というのは学生の頃の酒量で、
さすがにそれだけ飲むと素敵な気分になりました。
(ちゃんと歩いて帰ったけどな。おっちゃん達もう歳だな)
酒で胃を壊して通院する羽目になったのでもう無茶は 出来ませんが、
今でもやっぱり酒は好きだ。 あと、私もチョコで酒が飲める人。
いや、饅頭でもケーキでも平気だ(よしとけ)。



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