誕生日と魔法使い ある貧乏人の家に、美しい魔法使いが現れた。 美しい魔法使いは魔法で色とりどりのプレゼントを出して言った。 「お前にナットクラッカーをやろう。 お前に画集をやろう。 お前に葉巻をやろう。 香水を、万年筆を、ネクタイをやろう」 貧乏人は驚いて言う。 「ちょっと待ってください。 好意は嬉しいけど、そんな洒落た品物は私に相応しくない」 美しい魔法使いは困って言いました。 「では珍しいチョコレートがいいのか? 上等の紅茶の葉を贈ろうか? それとも手作りの犬のぬいぐるみが欲しいのか?」 貧乏人は首を振ります。 「プレゼントは必要ないのです。 今のままで十分足りています」 美しい魔法使いは美しい顔のままむっとしました。 「俺はお前を喜ばせたいのだ! 何か欲しいものはないのか!?」 「・・・・・・」 「・・・・・・」 「……あなた」 「ええ?!」 美しい魔法使いが美しい目を真ん丸にしたので、 貧乏人は内心ちょっと笑いました。 「下さる物の中にあなたは含まれないのですか?」 「俺は物ではない」 「人を喜ばせるために必死になっているあなたは たぶん良い人で、そして間違いなく面白い人だ。 私はあなたと友達になりたい。いけませんか」 「……お前はそれで嬉しいのか?」 「嬉しいです。そんな風に仁王立ちしていないで座りなさい」 「え?ああ、そうか?」 美しい魔法使いは普段座りなれていないのか 随分ぎこちなくしゃがみこみました。 それを見てとうとう貧乏人は吹き出してしまいました。 人を喜ばせるのが好きな美しい魔法使いは 笑ったらいいのか怒ったらいいのか さっぱり分からなくなって変な顔をしました。 夢から覚めたリーマス・ルーピンは 真っ直ぐシリウス・ブラックの寝室まで向かい、 「君が誕生日誕生日誕生日と毎日唱えるせいで変な夢を見た」 と抗議し、ふたたび自分の寝台に戻った。 その抗議で目を覚まさなかったシリウス・ブラックは 友人の誕生日を祝う夢を瞬間的に見た。 夢の中で2人は「誕生日誕生日誕生日」と ひたすら唱えて笑っているのだった。 BACK |