誕生日とプレゼント



 どのような遠慮にも、拒絶にも、照れにも、恫喝にも。
 決して負けない理論を一年がかりで構築したシリウスにルーピンは言った。
 3月10日の朝だった。
「欲しいものがあるんだ」
 てっきり数時間がかりの説得になるだろうと身構えていたシリウスは、拍子抜けして椅子に座り直す。
「まあ、もし君さえよければだけどね」
 愛する者の為なら例え世界最大のダイヤだろうと贈りたいという生まれついての情熱と、そして純粋な興味でシリウスは先を促した。
「なにが欲しいんだ?」
「君の子供の頃の話をひとつ、してくれるだろうか」






 ルーピンは不審そうな顔をしたシリウスに説明する。
「私の知らない話で、そして君が主役で、聞くとく幸せな気分になれるような話がいい。私は君の子供の頃の話を聞くのが好きだから」

 シリウスは即座に了承し「考える時間を15分くれ」と真剣な顔で言った。ルーピンは待ち時間を利用して、2人分のお茶を用意した。
 すっかり準備が整って拍手と共に始まった思い出話は、少年の頃彼が飼っていた犬と、シリウスの冒険の話だった。
 その話はリーマス・ルーピンの為にだけ語られた物語であるのでここには記さない。
 ルーピンは非常によく笑い、そして話の終わった時に心から礼を述べた。











あなたは大切な人に語る幼少の頃の話を持っていますか?
例えば冒険譚。例えば失敗の話。例えば嬉しかった話。
あなたは大切な人にどんなお話をしますか?



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