当日は皆さんの質問に、
井上医療部長がたくさんの情報を交えて答えて下さいましたが、
それを「らくちん」用に簡潔にまとめてくださいました。
丁寧にお答えくださり感謝しています。
【質問1】 レミケード®を使っていても変形は進むのですか?
[回答] 生物学的製剤(レミケード®、
ヒュミラ®)は強烈なボルタレン®
(つまり消炎鎮痛剤など)と考えて…、病気を元から治す薬ではない。
でも、痛みが軽くなってどんどん動けるようになれば最高の薬。
早期から使えば将来、背骨が固まらないで済む…という科学的立証はまだない。
レントゲン写真上で、
靭帯骨化の進行を少し抑えたという報告が欧米でちらほら出てきているが、
現時点では、ASと診断のついた人全員に、直ちに骨化予防・
抑制の目的で高価で副作用の強い生物学的製剤を開始すべきという段階ではない。
【質問2】 虹彩炎(ぶどう膜炎)がよく出る人と出ない人がいるが、
どうしてですか?
[回答] 出る人は何やっても出る、
出ない人は何もしなくても出ない。
出ても、生涯で1度だけ、毎年必ず、ある年代に集中…と、人によって千差万別。
やはり遺伝子の作用が大きいと思う。
自分自身およびたくさんの患者さんを見てきた経験からは、
特別な発症誘因は見当たらず、また再発防止に有効な方法はないようである。
とにかく早期発見(充血、眼痛、羞明、流涙、急激を視力低下や視野狭窄など)
と早期治療が大切。
ASに合併した虹彩炎だからといって、
普通の虹彩炎と治療法が異なるということではないので、
とりあえず一般の眼科医にかかれば良い。
【質問3】 虹彩炎を繰り返し見えにくくなり、手術した人はいるのですか?
[回答] 早期発見・早期治療なら、昨今は、
そのような事態になることは少ない。
昔の教科書に出ていたような失明に至ることもまずない。
しかし、炎症が強く、また再発を頻回に繰り返す場合、
あるいは不運にも治療薬として使用するステロイドの副作用などにより、
緑内障や白内障になることは稀にある。
虹彩炎そのものが手術の対象になることはないが、緑内障、白内障、
網膜剥離などが続発した場合には手術が必要となることもあり、
それにより改善が十分に期待できる。
【質問4】 病院に行かず、
市販の痛み止めを飲んで生活していてもいいのでしょうか?
[回答] 病院で出るいわゆる消炎鎮痛剤
(非ステロイド系抗炎症薬NSAIDs)と同じような類の薬なので、
市販のもので効いている、すなわち、
痛みやこわばりや倦怠感が楽になって、
日常生活や社会生活が楽にできるようであればそれで良い。
ただし、やはり定期的に医師(できればリウマチ医)
による病状や副作用チェック、
あるいはアドバイスを受けながらが良い。
因みに、医師から貰っているものでも、
自分で効いているという実感がないままに
長期にわたり漫然と飲み続けている患者さんが結構いるが
百害有って一利無し。
精神安定剤代わりであっても副作用のリスクの方が大きい。
【質問5】 横向きにしか寝れない人の手術はどうやってするのでしょうか?
どこの病院でも手術できますか?
あらかじめ病院を捜しておく必要はありますか?
[回答] 麻酔がかかれば仰臥位でしばらく居られるかもしれず、
医療スタッフが工夫・注意すれば可能と思われる。
手術・麻酔はなるべく大きな病院で。
普段から受け入れ病院を決めておくというのはなかなか難しいだろうし、
交通事故などの緊急手術の場合には非現実的なことだが、
手術が決まったなら、
事前に(できれば手術が決定した時点、入院前)
自分の肉体条件を主治医に話しておき
(背骨が固まって動かない、骨がもろくて折れ易い、
平らな所に仰臥できない、口が十分に開かない、
胸が十分に拡がらない、腰椎麻酔が刺さらない可能性がある…など、
人によって千差万別だが)、
入院後は、麻酔科医、看護部にも伝えておく。
レントゲン撮影時に硬い台の上で仰向けになれない、
術後は長時間同じ姿勢でいるのが幸い…などということも遠慮なく。
『らくちん』17号の「AS患者の手術に当たっての留意点」
をコピーして渡すことも勧められる。
【質問6】 身体障害者手帳の級をあげるにはどうすればいいですか?
[回答] 手足の関節機能(可動域)障害ではなく、
脊椎の体幹機能障害で認定される可能性がある
(杖無し連続歩行 2 km以上不能で5級、100 m以上不能で3級、
ベッドサイド数歩以上不能で2級、
自力で支え無しに臥位から立ちあがる事が困難で2級)。
残念ながら、診断書の書き方(医師によりまちまち)、
申請先の自治体その他により運・不運があるようである。
【質問7】 ASで頭皮に症状が出ることはありますか?
[回答] 普通はない。
ただ、慢性の痛みが続くと、
知覚神経や脳の知覚中枢の感受性が高まった結果、
痛みを過敏に感じるようになることはある。
そのような場合には、
リリ力®やトラムセット®や
抗うつ剤が効く可能性がある。
【質問8】 医療保険は必要ですか?
ASでも入れますか?
[回答] できれば入っておく方が良いが、
薬を飲んでいることを告知すると難しいし、
昨今、保険会社は告知義務違反に厳しくなっている。
しかし、最近は、様々な種類の保険ができていて、
条件付きで(たとえばAS以外なら給付可能とか)
入れる場合もあるので、
いろいろ情報を収集して研究してみるべき。
相談に乗ってくれる機関・会社もある。
《番外編》 この際、皆さんからよく聞かれる質問もしてみました。
【質問Q】 井上ドクターは、どうしてあんなに元気で、親切なんでしょう?
[回答]
かなりの偏食なため(それでも還暦過ぎて、
なお成人病無しに元気で生きている)、
精神安定剤としての総合ビタミン剤服用。
なっちゃったもんしょうがないじゃん…という開き直り、
諦め(明らかに認める)の境地、
何事にもこだわらないというチャランポランな性格
(いちいち原因究明なんかしない)。
それと、よく働き良く遊ぶ。
他人様に、「ありがとう」って言って貰えた時の喜びが、
生きるエネルギーになっているんでしょう。
だから、ありがとうって言ってくれて、ありがとう…という気持ち。
結局は自分のためにしていることなんだけれど、
それが他人のお役に立てているのであるなら、
幸せなことだと思います。
以上
元気の源まで丁寧にお答え頂きました。
この質問は、きっと皆さんも知りたかった質問だと思います。
良い機会になりました。ありがとうございました。
女性部長 M
質問者 日本AS友の会女性部 女性会員の皆様
回答者 日本AS友の会医療部長・事務局長 井上 久
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