難病特定疾患認定を求むる陳情

HLA検査の保険適用認可を求むる陳情

厚生労働大臣 様


 陳情書(案)

日本AS(強直性脊椎炎)友の会 
会長 田中 健治



1.難病特定疾患認定を求むる陳情について

 私達は「強直性脊椎炎」(略称AS)という進行性の難病を抱える 患者であり、「日本AS友の会」は、その患者会であります。患者会を 代表して陳情させていただきます。

 本疾患の発症初期には、慢性関節リウマチや脊椎カリエス、あるいは 椎間板ヘルニアなどと間違われることが多く、病状が相当に進行してから 初めて「強直性脊椎炎」と診断されることがほとんどです。この病気を 医学的に表現すると「脊椎、仙腸関節、四肢の関節を侵す慢性炎症性疾患 で、全身多発性に疼痛を生じ、最終的には炎症を起こした脊椎や関節が 骨性強直に至り、脊柱の後弯変形と可動性が消失し、時に股関節や膝関節の 可動性も消失して、歩行・日常生活に重篤な障害を来たす」ということに なりますが、数ある難治性疾患の中でも、病名が示すとおり「強直」、 すなわち「背骨や手足の関節が固まる」ということがきわめて特徴的で あり、患者自身にとって大変苦しく、やっかいな病気と言えます。

 多くの場合、10〜20歳代に、頚部や腰背部の疼痛、あるいは四肢の関節の 疼痛や腫脹などの関節炎の形で病気が始まります。病勢のピ−クは20〜30歳 代で、40代に入ると次第に鎮静化し、それまでの疼痛と入れ替わるように 脊椎や四肢の関節の運動制限が目立つようになります。勿論、20〜30歳代 で強直(運動性消失)に至るケースも多く、このために、様々な、そして 大きな機能障害が生じます。

 本疾患で見られる疼痛はしばしば激痛であり、昔から「ファイトを 失わせる痛み」と表現され、慢性関節リウマチその他の病気の痛みとは 区別して表現されて来ました。手指から始まることの多い慢性関節リウマチ と違い、脊椎、そして股関節や膝関節のような大きな関節に炎症を起こす ことや、強直という通常予測だに出来ない形態に進行して行く恐怖感が、 そのような痛みの表現としてとらえられてきたのだと思われます。

 この病気の原因は、未だ判明していません。従って、治療法も確立 されていません。患者はひたすら鎮痛剤や理学療法など対症療法の助けを 借りながら、身体が固まらないよう精一動かそうと努力し続けるだけです。 そうしながら、お互い助け合い励まし合って自立しようと頑張って おります。漢方薬も含む薬剤の使用や鍼灸その他の代替療法以外では、 強直した関節を手術で改善する人工関節置換術や脊椎矯正骨切り術などが 時に行われ、患者の社会復帰を助けていますが、これら手術により病気が 治る訳ではありません。いかなる治療によっても、健常者のように 安定した体調を維持することは困難で、一年はおろか一ヵ月でさえも、 良い体調で就労できる人はごく一部に限られます。

 大半の者は、一週間先の約束も不安を抱えながら行う有り様で、 就業に際しては様々な制限が生じ、従って、収入も少なく、医療費の 日常生活への圧迫は相当にきついものがあります。

 ところで、平成2年10月1日には、東京都が独自で強直性脊椎炎を 特定疾患に指定致しました。国の特定疾患にすでに認定されている クロ−ン病や潰瘍性大腸炎の合併症としても強直性脊椎炎は存在します。 それなのに、この病気が認定を受けていないことに、疑問を抱かざるを 得ません。

 欧米に比べ、日本では患者数が極めて少なく、推定で約6,000人くらい と考えられています。それでも6,000人の者が、この病気を抱えて、 家族と苦労をともにしながら必死で生きようとしています。どうかどうか、 これら諸事情をご賢察の上、一日も早く「強直性脊椎炎」を国の 難病特定疾患に認定して下さい。

 伏して、お願い申し上げる次第です。


2.HLA検査の健康保険認可を求むる陳情について

 HLA(Human Leukocyte Antigen)はヒト白血球抗原の略称で、 白血球の型を表します。臓器移植においては、拒絶反応を抑えるため、 ドナ−とレシピエントの間でこのHLAの型を合わせることが必要と なります。一方、多くの人のHLAを調べているうちに、あるHLAの型は ある種の病気と相関性がある、つまりHLAは色々な病気との関連性を示す 遺伝標識であるということが次第に明らかになってきました。 そのため、HLA検査が病気診断の重要な手掛かりとなることが少なく ありません。例えば、若年性糖尿病ではDR3型、ベ−チェット病では B51型、原田病(眼科)ではDRw53型、慢性関節リウマチでは DR4型が多いことが判っていますが、特に「強直性脊椎炎」では、 B27型との相関性が群を抜いて高いことが判明しています。
 一般の日本人においてHLA−B27型を持つ人は1%以下であるのに 比べて、強直性脊椎炎患者では85〜90%と非常に高い数値を示します。 このようなことから、HLA検査は、強直性脊椎炎という病気の早期診断、 あるいは確定診断のために欠かせない検査となっています。

 めざましい医学の発達に伴い、多くの病気が遺伝子レベルで解析され、 その治療法が開発されようとしている現代です。初期には似た症状を 呈する病気が多くてまぎらわしいこの強直性脊椎炎の診断には、この HLA検査は大変重要です。ABO型の血液型検査と同じく、生涯で 一度だけ調べれば良い検査です。それなのに、どうして、この検査が 健康保険で実施出来ないのでしょうか。私達には全く理解できません。

 これまで、健保適用外検査であったために、医師は、強直性脊椎炎を 疑っても、本検査の実施につき患者に遠慮をし、また患者はその検査料の 高さに実施をためらいます。その結果、診断が遅れてしまうことが少なく ありません。これは大変な悪循環です。どうか、一日も早く善処して 下さい。

 検査を無料で……とは申しませんから、せめて健康保険の適用を 受けられるよう認可していただけませんでしょうか。

 陳情1で記述しましたように、残念ながら、強直性脊椎炎の診断は 病状がかなり進行してから確定するケースがほとんどです。他のいかなる 病気でも同じですが、早期診断、早期治療に勝るものはありません。 早期に診断が確定すれば、それなりの治療効果は望めます。原因不明の 全身の疼痛に悩まされ、医者に行っても「わからない」と言われたり、 他の病気に誤診されたりすることにより、さらに大きな不安にさいなまれ、 人知れず悶々とした人生を送っている“人生これから”という若い 強直性脊椎炎患者にとって、とりあえず病名が明確になるということは、 精神衛生上も非常に有効なことであります。

 他の検査同様、HLA検査をもっと楽に受けることが出来るように、 そして、強直性脊椎炎が早期に診断され、早期に治療が開始されることが 可能となるために、健康保険の適用について、どうかよろしくお取り 計らい下さいますよう、お願い申し上げる次第です。


追記
 特定疾患認定システムが平成8年に改正され118疾患の枠組みの中から 毎年、公的負担対象疾患を委員会で決めておられるということは、重々 承知のうえで、陳情申し上げております。どうかよろしくお力添え賜り ます様お願い申し上げます。


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