〔寄稿〕

   人工股関節手術体験記

「ええっ、手術してもいいのですか?」


大阪  O


 「Oさん、股関節の手術を受けてみませんか、楽になりますよ」、 「ええっ、手術をしてもいいのですか?」 私の股関節手術はこのような先生との会話がきっかけでした。

 手術を勧めて下さった先生は、 父が入院していた病院の整形外科の先生で、 この会話は初めて診て頂いた時でした。 それまで私の左股関節は硬直し曲げる事は出来ませんでしたが、 痛みも少なく歩行は出来ておりました。

 しかし父の自宅介護で無理が出たのか、 加齢の所為か、2〜3年ぐらい前から痛みだし、 ちょっと痛み止めでも頂こうかと、 父の入院している病院を受診したのでした。


 私の左股関節が変形したのは、 ASの痛みが足に出るようになって丁度10年目からです。 それ以来ずっと左の股関節だけが曲がらず ほぼ真っ直ぐに伸びた状態で30年生活してきました。

 股関節の変形が始まった頃、 2年近く温泉病院で入院生活を送り、 両松葉の生活が続きました。 入院生活が終わる頃には痛みも和らぎ、 なんとか杖で歩けるまでに回復しておりました。

 しかし痛みは和らいだものの、 左股関節は曲がらず真っ直ぐの状態で硬直したままでした。 以来トイレ、椅子、公共の交通機関、車の運転等々、 座るという事に非常に神経を使う事になり、 変な姿勢で何十年も歩いたり座ったりしていた為か、 背骨が右に傾いていきました。


 温泉病院を退院したのが32歳、 それ以来人工関節の情報を得ようと何人かの先生方にご相談しましたが、 年齢が若いこと、痛みが無く歩行が出来るという理由で、 手術はやらない方が良いだろうと中々手術適応と診断されませんでした。

 体幹の痛みは幸運にも、 煎じる漢方薬でコントロール出来る様になっており、 医師に掛かる頻度がめっきり少なくなっていきました。 主治医の診察を受けるのは数年に1〜2度位といった具合で 医療情報も乏しくなりがちでした。 そのうちに関節手術の事は気になりながらも、 私の頭から離れていきました。


 そんな状態が長年続いておりました時に、 思いも寄らぬ「人工股関節の手術を受けてみませんか」とのお話で、 びっくりすると同時にやっとチャンスが来たと嬉しく思いました。 早速その先生から専門医を紹介して頂き、 診察を受けると手術しても良いと言うことになり、 手術を申し込みました。 最初に手術の話が出てからその診断が出るまでの間に父が亡く在り、 家業の引継ぎなどで約半年遅れでの手術となりました。

 嬉しさの反面、私の様に長年硬直した股関節を人工に置換した方が、 私の知る限り周りには居られませんでした。 それで筋肉やその他の関節周辺の組織がどれだけ術後に可動してくれるのか、 とても気掛かりなままに、平成24年3月手術を受けました。


(手術を受けての感想と結果)

 今回の股関節手術についての私の感想ですが、 医師によって人工股関節手術は、 まだ考え方にいろいろな違いがあるのではと感じました。

 私が何回か行きました医師の講演会で、 人工関節手術について質問しましたが、それだけでなく、 やはり実際に診察を受けるべきだとも思いました。 また私が以前得ていた情報よりはるかに、 人工股関節の形状や材質、手術の手法、 術後リハビリの考え方に進歩があってきているようです。

 リハビリは手術の翌日からベッドで軽く始まり、 その翌日にはもう歩行器での歩行となりました。 この事は、 寝たきりが不得意なAS患者にとっては非常にありがたい事だと思います。

 5日目でシャワー浴、2週間ほどで杖の歩行訓練が始まりました。 傷口の痛みは皆無で、関節そのものの痛みも全く感じませんでした。 手術から退院まで1週間延ばしてもらい4週間でした。

 今、術後約1年8ヶ月位になりますが、 今冬の寒さにも痛みは無く、 手術をした事を感じさせない状況です。 ただ30年も関節が硬直した状態が続いておりましたので、 曲がりの角度は今60度位でしょうか。

 しかしトイレ、交通機関などで座る時には、 両のお尻を座面に乗せる事が出来る様になり大変楽になりました。 これで旅行なんかも楽に出来るぞと思うと嬉しくなります。 手術して頂いて本当に良かったと思っています。


 最後になりましたが、 今回の手術で多くの方から励ましや助言を頂き感謝です。 手術を勧めて下さった真田先生、 大阪府立急性期総合医療センター人工関節センターの医師の皆様、 多くの看護スタッフの皆様に厚く御礼申し上げたいと思います。



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