R.K. 「キョウチョクセイセキツイエンですね」、この言葉を最初に 聞かされたのは1990年、タイの首都バンコクのG病院のW医師から でした。 W先生はタイ人ながら日本の大学に留学、卒業されており、日本人と 変わりない流暢な日本語を話されるが、初めて聞くこの病名に思わず 「先生、どんな字を書くのですか?」と尋ねたところ、先生は手もとの メモ用紙にスラスラと『強直性脊椎炎』と書かれ、「ASとも 言われています」と説明された。 板硝子の営業職を主に日本国内の各地への転勤を重ねていた私は、 50歳過ぎてから海外の関係会社の日本人代表として、この時、初めての 海外勤務を経験していました。 このG病院は、数多くの日本の大学への留学し卒業したタイ人の 医師やナースを擁しているため、日本語で治療が受けられることで 有名であり、慣れぬ海外生活を送る日本からの派遣社員とその家族に とっては、大変心強い存在でした。 1970年頃に大阪で勤務していた時代、商談が終わって椅子から立ち 上がった瞬間、腰に激しい痛みを感じて以来、腰痛に悩まされていた 私は、特に治療らしい治療も受けずにいました。1980年頃には、出張先の 沖縄のホテルで、ベッドに横になれぬ痛みを放置して、藤椅子で一夜を 過ごしたり、帰ってきてから慌てて福岡の整体医に駆け込んでみたり、 その後の名古屋や札幌ではマッサージに頼ったりで、今から考えれば、 その場凌ぎの方法で対処していました。 バンコクでも、当初はゴルフの帰路、タイ式マッサージを受ける程度の 処置でごまかしていましたが、一度、意を決してW医師の診断を仰ぐ事に したのが『AS』との最初のお付き合いとなった訳です。 X線写真を手にしたW医師は、「この病気は完治するのは難しいと 言われていますが、痛みを和らげるには、タイで残念ながら入手できません が、インドメタシンを含んだ塗り薬と、座薬が日本では手に入るでしょう から、出張の際にでも買っていらっしゃい」との説明をされた。さらに、 「ゴルフは別にかまいませんし、この暑い国で大変でしょうが、なるべく 歩くことを心がけて下さい」と付け加えられた。 このアドバイスのうち、出張で帰国の際にバンテリン® を購入することは早速実行したのですが、歩く方は、片道500メートル ほどのルンビニ公園に行き、約3キロの公園の一周に何度かトライ しましたが、なにせ年間平均33度を越える暑さと、道すがらの排気ガスの 酷さに長続きせず、1992年6月、4年のバンコク生活を終えて日本へ 帰国することになりました。 帰国後、順天堂大学の山内先生に診断を仰いだところ、紛れもなき 『AS』と言われ、ご専門の井上先生のお世話になることとなり、 その結果、井上先生の懇切丁寧な診察で、『後縦靱帯骨化症』も 認められること、そして、これらが母系の遺伝的なものであり、 現在の年齢なら(帰国時57歳、現在63歳)、注意しながら付き合って 行かねばならぬが、きわめて軽度なもので、日常生活になんら差し 支えなく、適度な運動もゴルフも含めおやりなさいとの診断を頂いた のであった。 その後、1年に3〜4回、井上先生の診断をお願いしているが、特に 進行しているような気配もなく、本年春、40年の会社生活に終止符を 打ってからは、週一度はゴルフに、そして、ゴルフ以外で週5万歩は 歩くよう心がけている昨今です。 井上先生のところに伺うと、重度のASの患者さんにお会いすること もあり、また先生のお勧めで『日本AS友の会』の賛助会員にさせて頂き、 会報の『らくちん』を拝見するたびに、わが身の症状の軽いことを幸い と感じざるを得ない気持ちで一杯です。 周りを見渡せば、実兄、母方の従兄弟に『AS』らしき症状が 見受けられ、先生のお話を実感しました。ただ、実母は、幸いにも現在 97歳を半年過ぎても、年相応の元気さを維持しており、先生のご指示 を守りながら、これからの人生を楽しんでいくだけでは申し訳ないと 思い、会社生活からの引退を機に『日本AS友の会』のお手伝いでもと 井上先生に申し上げたところ、「らくちん」に寄稿して欲しいとの ご依頼があり、恥ずかしながらこのような拙文を寄せさせて頂く次第 となりました。 前述のように、きわめて軽い症状であることに感謝しながら、毎朝、 ベッドの上で両脚の屈伸、上体の前屈などの軽い運動を続け、これまた 椎間板ヘルニアに悩む家内を助けて家政夫(?)を勤め(家内は却って 手間がかるとグチをこぼしていますが)、適度なゴルフとウォーキングに 加え、最近では難病に悩む子供とその家族の援助をするNPO (非営利事業組織)「ファミリーハウス」のボランティアのお手伝いを 始めかけております。さらには、“六十の手習い”でパソコンを始めたり と、毎日楽しく明るく過ごすようにしています。 それだけに、今秋、浦安で開催される「日本AS友の会総会」には、 家内ともども共々、是非参加させていただく予定ですし、会員の皆様に お目にかかかれること、未だ行ったことのないディズニーランドの見学を 今から楽しみにしています。 友の会の発展と、会員の皆様のご健勝をお祈りしております。 |