アメリカの会報から

(1997.春号)
POWER OF THE MIND


 MIND BODY MEDICINE(心身医学)は過去15年間の間にますます ポピュラーな分野となってきました。手術や西洋医学的治療に依存 しがちな人々のために、ストレスや痛みの軽減の方法を開発・供給する ことを目的として国中にセンターが急速に設立されています。国立予防 衛生研究所(NIH)は、このような代替治療の研究と評価を認めて 1992年にOAH(代替治療事務局)が設立しました。そしてここ4年 以内に、その予算は300万ドルから740万ドルに増えました。これら 伝承的(秘伝的) 治療に関する調査・研究の結果、ダンスセラピー、 催眠療法、心理療法へのの資金供給がOAHによりなされるようになり、 また、1996年1月には、ワシントン州が、針治療やマッサージ療法の ような、これまでの西洋医学的なもの以外の治療に関する費用を 健康保険に請求できる最初の州になりました。

 ところで、「ヨガやダンスセラピーやいわゆる手かざし療法のような ものは主流になってきたのでしょうか?」「これらの治療の効果は科学的 研究によって裏付けられているのでしょうか?」。正確に言うと「NO」 です。しかしながら、ハーバート・ベンソン博士によれば(心臓学者で ハーバード医科大学助教授、リラクゼーション反応の研究で知られて いる)、「心が静まる時、身体の調子はよくなる(整う)」ということ です。“POWER OF THE MIND(心の力)”をうかがい知るには、小さな 子供が軽い怪我をしたときのことを思い浮かべてみれば良いのです。 怪我が深刻なものでないなら、愛する人に痛いところにキスして もらえば、子供の痛みは魔法のように消えてしまうでしょう。これは、 いかに心が身体に影響を与えるかの、医学的言葉を使うならプラシーボ (偽薬)の良い例です。

 このことは、私たちが「思うこと信じること」が、「どう(苦痛を) 感じるか」ということに影響を与えていると言えるのではないでしょうか。

 AS患者達にこのことについてインタビューしてみると、答は思った とおり「YES」でした。「リラクゼーション技術は、自分の痛みと いかにうまく付き合って(管理して)行くかを教えてくれる、そして その結果、鎮痛剤を減らすのに役立つ」ということを意味しています。 けれども、何人かの人は、「確かにこの方法は有益だが、継続するための 時間と体力と訓練が必要だ」とも言います。

 一方、少数の人は、少し違った意見を持っていました。ある人によれば、 このような“心体両面療法”を生活に取り込もうとして失敗し、非常に 幻滅したので、罪の意識さえ生じ、気持ちが遠のいてしまったとのこと です。また、一人の患者は、「この方法(心理的側面からのアプローチ) を信じてやっていたにもかかわらず、私のASは進行し続けました。 私が本当に良くなろうと思っていないからでひはないか、改善しないのは 自分のせいではないのかと、自問自答し続けました。」と。

 こんな状況下で、心と体の関係の科学的裏付けに関する本格的な研究が 始まりました。国立予防衛生研究所は、この問題に関して、特に癌患者の 鎮痛治療に関連付けて研究しています。その結果、いくつかの勇気づけ られる結果が出されました。シドニー大学での研究により、イメージ療法と 結び付けた筋肉のリラクゼーションは、筋肉の緊張と不安のサイクルを 切って除痛効果をもたらす可能性があることがわかったのです。


(疼痛〜不安サイクル)
 痛みは不安を生み出し得ます。そして、不安は、我々に戦いの 準備や丘を駆け登って敵を捕まえる準備をさせるような作用を持つ 〔注:自律神経系のうちの交感神経刺激作用〕脳内ホルモンの分泌を 誘発します。そうすると、新陳代謝が高まり、心拍数が増加し、血液が 手足の筋肉の隅々まで行き渡ります。しかし、もし体内でこのような 準備がされても、行動が伴わない場合には、不安は増し、痛みも増す ことになります。このようにして、“痛み〜不安サイクル”が生まれ、 その結果、人々は抑うつ状態となり、自分をコントロール出来なくなり、 悲観的になったり嗜眠状態になってしまいます。


(サイクル切断)
 ハーバートベンソン博士らの「心体の関連性」に関する研究により、 リラクゼーションとか瞑想というものは、この“疼痛〜不安サイクル” に対して抑制効果を持つことがわかりました。リラクゼーション療法や 瞑想は、感情のコントロールならびに鎮静化をもたらし、心拍数を下げ、 脳波の徐波化、血圧を下げる効果かあることがわかっています。 このことは、読者の何人かには共感を得られるでしょう。しかし、 行動医学、健康心理学、予防医学に傾倒していない人達は、必ずしも 共鳴しないかも知れません。

 しかし、少なくとも「心身の関係、ライフスタイル、周囲の支援などが 良好な健康管理の基盤となる」という古くからの言い伝えには誰もが賛成 するのではないでしょうか。


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