事務局長 井上 久
平成17年9月8日から11日までデンマークで開かれた
ASIF(Ankylosing Spondylitis International Federation:
強直性脊椎炎国際連盟) の会議に3年ぶりに参加して来ましたので報告致します。
会場は、コペンハーゲンから国内線のプロペラ機で30分飛んだ
ユランド半島の付け根のセネアボアというところにある某大学の
美しく素朴な研修所でした。
参加は16ヶ国、参加者は総勢35名、特殊な病気であり、
しかも患者主体の会ですので(学会よりずっと楽しい!)、
海の入り江に囲まれた「天の橋立」のような半島に建つ可愛い会議場で、
開放した窓から吹き込む心地よい風を吸いながら、
終始アットホームな雰囲気で行われました。
〔話題〕
- 資金調達(今回の会議は新しい生物学的製剤の製薬会社が大スポンサー)
各国の患者会は、ほとんどが公的助成を受けていたり、
スポンサーがついていたりですが、日本は会費と寄附のみ。
(因みに、世界の患者会の会員数は、ドイツ 17,000人、
イギリス 7,800人、アメリカ 4,600人、ノルウェイ 2,300人、
スイス 2,340人、スロベニア 2,300人、ポルトガル 1,550人、
チェコ 1,400人、オーストリア 1,182人、デンマーク 920人、
ベルギー 765人、イタリア 562人、フランス 540人、
カナダ 466人、クロアチア 380人、アイルランド 112人、
我が日本は330人。その他、スウェーデン、シンガポール、
台湾などにも患者会あり)
- 他の類似団体との交流
ヨーロッパには同じようなリウマチ系患者団体がたくさんあって混乱状態。
意見・行動様式の違いから分裂・・・・はどこでもある話。
- AS患者の脊椎骨折多発(ドイツの患者の6パーセントが経験とのこと)
内科医は、骨折予防に骨代謝の薬をバンバン使うが、
最終目標は骨の量を増やすことでなく、骨折発生を減らすことである。
そのためには、転倒・骨折しないように筋力をつけるとか俊敏性を養うとか、
補助具や設備を整える方が優先ではないか?と整形外科医として個人的に発言。
- 生物学的製剤抗TNFα剤のASへの使用
ヨーロッパのAS患者の3〜5パーセントに使用されている。
症例を選んで慎重に投与すれば(ここが大切!) 、
関節リウマチ同様素晴らしい効果をあげているが、
どの国も高額な費用が問題。
副作用もイメージほどには怖くはないようで、
日本独特の心配である結核の再燃は抗結核剤の予防的投与で
かなり抑えられる。
- 「世界脊椎炎の日」を…というポルトガルからの提案
骨と関節の年をやったばかり・・とかの意見が出て今回は実現せず。
では、とスペインと合同でイベリア半島の脊椎炎の日をやる(やった?)らしい。
- neurocognitive therapy
昔の健康な頃のイメージを働かせて脳内の意識改革をするという(?)、
精神療法とどこが違うのかよくわからないけど
効果をあげたという新しい治療法がドイツから。
- ASの理学・運動療法
全員でフェリーに乗ってリハビリ病院へ見学に。
無料か低費用で、
北欧には年に3週間の定期的教育入院が可能な国が多く、羨ましい限り。
- 脊椎が強直したAS患者仕様の改造車の紹介
こういう装備に関しては日本の方がずっと進んでいる。
ボンネット上に側方が見えるミラーをとりつけるという程度で、
日本車の室内側壁のエアバックや車内モニターで見られる
側方(後方も)注視カメラに驚いたりするレベル。
- 脊椎が強直したAS患者が事故や急病で病院に救急搬入された時に、
この病気を知らない救急医や当直医に乱暴に扱われないようにと、
自分の脊柱変形の状態を撮影した写真を入れた
患者携行用カードを作ったというデンマークからの発表。
我が「日本AS友の会」ではとっくに『強直性脊椎炎CARD』
なるものを作成・配布済みで、会員は普段携行しているぞと、
現物をその場で提示・紹介。
会議終了後、コペンハーゲンに戻り、
37年振りに「人魚の像」と再会しましたが、
人魚も私も37年で大分傷んだものです。
あの時は、体操競技の国際試合で行ったという
“スポーツ少年”だったのに…。
町には自転車が多いのと、そのスピードが速いのと、
当然接触事故が多いのと、それに、物価が高いのに驚きました。
消費税17%、納税は収入の45%程度とのことです。
夜は、これまた37年振りにチボリ公園を散策しましたが、
この日はちょうど“9.11”。
デンマークはイラク派兵でテロリストの第一目標国に入っていたそうです。
ヨカッタ!なにもなくて。
平均身長の高い北欧のトイレの小便器の縁の標高が高くて、
いつも爪先立ちで疲れました。
その後、旧友を訪ねてカナダはモントリオール、
ケベック、ナイアガラ、トロントと回り、
最後にトロント大学に留学中で、帰国の都度
、私の外来を受診するASの女子留学生に会ってお土産に、
カナダでは手に入れ難いという鎮痛剤をプレゼントして来ました。
冬は零下30度以下になるというAS患者には辛い辛い極寒の地で、
がんばって勉強しています。
毎日、自炊で和食(一汁一菜?とのこと)を食べているそうで、
大和撫子の精神を忘れない立派な娘さんです。
次回はチェコかフランスになりそうです。
デンマークから大西洋を横切って西回りでカナダ、
そして太平洋を渡って日本と、結局、世界一周!
年のせいか、世界一周のせいか、
いつもの時差ボケとはちょっと違う感じで、
眠いのか眠くないのか、いつ寝ていいのか、
いつ起きていいのか、いつ食べるのか、
いつ出せばいいのか・・1ヶ月ぐらい迷いました。
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