Q.25.運動療法(治療体操)はどんなものをどのように行うのですか?
どんなタイプのASにおいても必要不可欠なもので、ある意味では
一生涯、日課として続けるべきものと言えます。
欧米諸国では、AS専門の理学療法士・運動療法士もいて、たくさんの
指導書が作られています。日本ではまだほとんどないと言って良いの
ですが、唯一、辻本医師(日本AS友の会顧問医)ら
によるものがありますので、これと、ASA
(アメリカの患者会)、そして最近NASS
(イギリスの患者会)会報に載ったものを紹介します。
個々の患者により、あるいは同じ人でも時期によって、痛みや
運動制限の部位や程度、、基礎体力、合併症などが全くまちまちなのが
ASの特徴でもありますので、医師あるいは理学療法士(残念ながら
日本ではまだASに精通している人は少ないが)に相談しながら、
それぞれの状態に合わせて、できる範囲のものから、毎日時間を
きめて少しずつ、受け身的ではなくあくまでも自分自身で自発的・
積極的に行うことが大切です。従って、マニュアル通りにやる
必要はありません。
ここに紹介したのは、脊椎の強直が進んでしまった重症の人には
無理なものが多いかも知れません。あくまでも目安ですので、
そのような人は、これを参考にした、独自のものを開発して下さい。
起き抜けに急に始めると、かえって硬くなった組織を傷めることにも
なりかねませんので、徐々に体を動かして暖めて行くことも大切です。
痛みやこわばりを緩和し、運動や生活動作をし易くするために、
温熱療法(種々のものがあるが、やってみて気持ち良ければ何でも良い)、
低周波治療、マッサ−ジ、レ−ザ−治療、その他を適宜、併用しながら
行えば一層効果はあがるはずです。
a.脊柱の伸展運動
壁のコーナーに向かって立ち、呼吸運動に合わせて、上肢で支えながら伸展する。
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患者はあぐらに座り、肩を開く運動と合わせて、全脊柱の伸展を行う。
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床上で膝と手で体駆を支えながら、(1)リズミカルに脊柱伸展運動を行い、
(2)船底運動や(3)枕を使った腹臥位読書体位も入れる。
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b.股関節運動
下肢の重さを利用して、振り子のように股関節の屈伸、内外転運動を行う。
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c.肩関節運動
できれば、介護者が、患者の肩甲部を上から押えて、大きく回転させる。1人で行っても良い。
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胸郭拡張運動(深呼吸)に合わせて、頭の下で組んだ腕を開く。
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d.水泳練習
脊柱伸展運動、各関節運動、胸部(呼吸)運動の調和がとれて連続的にできる。
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(谷、辻本ほか:強直性脊椎炎の治療と経過関節外科1987)
ASAのガイドブックによるASの運動療法
毎日の運動
1.踵と尻を壁につけて立つ。そして顎を引き、頭を壁につけ後ろに
押しつける。5つ数える。少し休んでこれを10回繰り返す。
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2.しっかりした椅子に座って、片方の手で胸の前から反対側の背もたれ
を持ち、もう一方の手を思い切り後ろに伸ばす。頭も反対側の肩を見られる
くらい回す。この状態から、片方の手を引いて、もう一方の手をさらに
伸ばすようにする。しばらくその位置を保った後に、正面に向き直る。
これを両側それぞれ3回ずつ繰り返す。
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3a.肩の力を抜いて座り、顎を引いて真っ直ぐ前を見る。そして耳が
肩につくくらいまでゆっくりと首を横に曲げる。その状態をしばらく
保ち、肩の筋肉にまだ緩みがあるのを確認して、もう少しだけ首を
曲げる。その後、正面に向き直る(横に曲げる時、鼻の動きが同じ面を
保つように、すなわち頭が回旋しないようにする)。これを両側
それぞれ2回ずつ繰り返す。
3b.頭を後ろに反らして、後ろの壁を見上げた後、視線を天井に沿わせ
ながら正面に向き直る。これを繰り返す。今度は頭を顎が胸につくように
できるだけ前に曲げる、その後顎を引きながら正面に向き直る。
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4.膝を立て仰向きに寝て、お尻が床から離れるように持ち上げ、
肩から膝までが一直線になるようにする。そのままの形で5秒待って
からもとに戻す。これを5回繰り返す。
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5.うつ伏せになり、顔はどちらかに向け、手は脇に置く
(必要なら胸の下に枕を置くとより楽になる。枕を腰の下に
置いてはいけない)。
a.膝は伸ばしたまま片足を床から上げる。左右5回ずつ上げる。
この時、確実に大腿が床から離れるようにする。
b.頭と肩をできる限り高く上ける。これを10回行う。
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6.四つ這いになり、右手と左足を床と平行になるまで上げ、
そのままで10数える。それが終ったら、今度は同じように左手と
右足を上げる。これを左右それぞれ5回ずつ繰り返す。
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7.仰向けに寝て、足を伸ばす。
a.手を胸の脇に乗せる。鼻から大きく息を吸って、口から大きく吐く。
吸う時は肋骨で手を押し上げるようにする。これを10回繰り返す
(吐く時も、吸う時と同じようにいっぱいまで吐く)。
b.次に、手を胸のもう少し上に置き、鼻から大きく息を吸って、
ロから吐いた時と同じくらいいっぱいまで鼻から吐くようにする。
吸う時は肋骨で手を押し上げるようにする。これを10回繰り返す。
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(ASA:A guidebook for patients.より)
注:決して無理をする必要はありません。図のように正確にできなくとも、
これに近い動作をするだけでも十分ですし、最初は軽く、回数や時間も
様子を見ながら徐々に増やして行って下さい。少し痛む程度に行う方が
望ましいと言えますが、終了後も痛みが続いたり、かえって痛みが激しく
なるようなら、軽く少なくするか一時中止して下さい。
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