2006年4月15日(土)
△▼4/15のゼミ▼△
本 日の作品
ストーリー 1
シナリオ 1
出席者: 男 4 女 3 (見学 1)
きょうはなぜか駐車場が一杯で待っても待っても空かない。係りの人によると、中ホールで「志村けん」のショーがあって「お客さん、動かないんですよ」と のこと。これじゃしょうがないと、引き返して路上駐車にした。その分、教室を開けるのが遅くなって焦った。
というのは、きのうになっても作品が来なかったので何人かに電話したら、C君が何とかしますといって引き受けてくれて、朝までに2つも送ってきた。時間 がないので読む間もなく急いでプリントしてきたので、C君が来ていては申し訳ないと思ったのだった。だが、誰よりも早く教室に着いたので、まずは安心。U さんの友人が見学にきたが、格好がついてよかった。
(時次郎さんの熱い感想が早過ぎたと気遣ってたけど、ぼくはいつも遅いので、かまわずどんどん書き込んでください)
まだストーリになっていない、途中の段階のいわば「創作メモ」だというのだが、いろいろと伝わるものがあって、なかなかの出来である。
1.千葉作品「“世界のはじまり”みたいに抱きしめて」
(ストーリー)
はやらない床屋の親子(真之介と育男)、という出だしがちょっと気をそそる出だしだ。どんなドラマが展開するのかと期待させる。が、実は、そういう家庭 ドラマではなく、“ニートしている”育男のどうしようもない日々と妄想が展開する。こういうと、実は身もふたもないが、作者の語り口はなかなか感じがい い。適当に飛んでいて、それでいて観念的ではない。あとのシナリオにもいえるのだが、作者の感覚がストレートに伝わってくる素直さがある。
Yさんが面白いことをいった。「ありよう」を描いたものはおもしろくない。で、「ありよう」とはどういうことかと論議になった。いうなれば、「若者のあ りよう」とか「サラリーマンのありよう」とか「ニートのありよう」とか、それぞれの個人性・個別性をみないということだと思う。それではステレオ・タイプ のドラマしか出来ない。
育男は、6年もつきあっている女性にプロポーズするが、あっさり断わられる。きのう知り合った男と心中するのだという。それなら俺もと、育男もネットの 自殺サイトを検索、相手を探す。うまい具合に女子高生を見つける。だが自殺などせずに、カーセックスを迫るが、女子高生は抵抗する。「汚れたくないから死 ぬのよ」という。この女子高生の言い分に感心した。なるほど、自殺願望の女の子たちって、きっとこういう感覚なのかもしれない。なんとなく最近の集団自殺 の連中の気持ちが理解できるようだった。というのも、われわれの世代では、自殺というと古くは華厳の滝に飛び込んだ藤村操の「岩頭の感」を思い出す。はな ぜ生きるかと悩んで飛び込んだ。あるいは、世をはかなんで命を絶ったのが普通だった。「厭世自殺」である。3年前ビルから飛び降りた友人は鬱病だった。
だが、この女子高生は違う。かといって、識者が最近の若者の「ありよう」として言い募っている“死んでみたかった”というような理由でもない。彼女は、 作者の想像力の見出した独自の理由を持っている。それがいいのだ。昔の少女小説にありそうだが、しかし、今の時代では、「ありよう」を免れていると思う。
さて、育男は、自転車タイムマシンの老人や中年男などと知り合う。だが、自殺するでもなく夢とも現実ともつかぬ世界を浮遊する。
その展開は、じっくり考えると問題はありそうだが、きょうはなぜかそこを追求するよりは、作者と一緒になって浮遊したい気分だった。そういう感覚を刺激さ れるものがこの作品にはあるということだと思う。
これは前にゼミで取り上げたことがあるが、その後「ピンク映画」のシナリオコンクールに応募したものだという。
2.千葉作品「明るい家族計画」(シナリオ)
一読して、これもなかなかストレートで素直なよさがある。だが最大の問題は、こんなに素直でいいのかということだ。ことさらピンク映画ということはない のではなかろうか。ひょっとしたら、だから、コンクールでは入選しなかったのかもしれない。
主人公は、今はサラリーマンだが、3年前はリーゼントでビッと決めたバンドマンだった。同棲相手も、ナンバーワンホステスだった。そんな二人が出会っ て、そして…、というお話である。
3年間限定で借りた借家の期限が来る。折から色々あって、二人は別れることになる。そのいろいろがちっともいやらしくないのが難点というべきか。
しかし、よく考えてみると、これは主人公不在のドラマではないかと思う。物語を貫く柱は何かはっきりしないのだ。いったいこれはどういうお話なの?と作 者に問い返したくなる。どうやら、作者も改めてそう問われると応えに窮してしまうようだ。
ストーリー「世界の始まり…」のように、千葉カラーはよく出ているので、少しもつっかえずに読める。なかなかうまいのだ。それだけに、ふと立ち止まって みると、引っかかるものがないことに気付いてしまう。
リーゼント、柿の種、チョコボール、コンドームの自動販売機等、細かいアイテムはいろいろある。どれも重要だが重要でなくてもいい。そういうアイデアは 作者は得意そうだが、せっかくだからもっと深めてほしい気がする。
女主人公の人間像をしっかり考えて、二人の関係をちゃんと描くという極めてオーソドックスなアドバイスを贈って、締めとしよう。
きょうの見学のKさんは、なかなか鋭い意見を出してくれた。アフターで話題になったが、在籍Kさんととてもよく似ていて、そのせいか、感覚も並ではな かった。ぜひ参加されることを期待しよう。
今日は、いつもとちょっと違ったゼミだったように思う。でも、楽しんだのは両師だけだったかも、とちょっと反省。
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