2005年8月21日(土)
 


△▼8/21のゼミ▼△


本 日の作品

ストーリー      3
出席者: 女 3   男 2


 臨時ゼミ
 予定より少ない人数となったが、忠太郎の住まいの近くにある佃島べりの公園のベンチで、ペットボトルを飲みながらのゼミとなった。川風が吹いて、心配し たほど暑くもなく、開放感あふれる3時間だった。
 ま わりには子供達が遊び、ヒマなじいちゃん・ばあちゃんが東屋で話し込み、池では犬が水をのみ、隅田川を行き来する船のポンポンという音が届き、そういう雰 囲気の中で「芸術風」を語り合うのもまた一興で、あっという間に夕刻5時の童謡がどこからか聞こえて来た。子供達の帰宅の時間である。
 ガキ達に習い,われわれ「シナリオの少年・少女達」も夜のシフトに切り替えるべく、ベンチを立った。



1.小俣作品「男寡のロマンス」(ストーリー)

 ヒロインは、昔「聖子ちゃん」と一部では騒がれたアイドル歌手だったが、お世辞にも歌がうまいとは言えずす ぐ消えた。今では人材派遣の会社に勤める夫と小学生の娘の面倒を見る専業主婦である。妻を亡くしてやもめ暮らしの主人公も、まさか自分と同じマンションに 「聖子ちゃん」がいるとは知らなかった。それがたまたまダンナの代わりに聖子ちゃんがマンションの自治会に出てきて、二次会のカラオケで彼女のかつての持 ち歌「シルエットロマンス」を歌ったことから、その事実を知る。相変わらず元プロとはいえぬ歌唱力だったのだが・・・。
 人生はひょうたんからコマ が出る。やもめの男はその下手な歌を聞いて思わず涙ぐんだのだ。亡き妻との「思い出の歌」だったのである。決してうまくいった結婚生活ではなかったが、死 者は美化される。おまけにあれから1年、地味な性格の男には女の影もないし、それをなんとかしようという気迫もない、さびしい「やもめ暮らし」なのだ。
 ああ あなたに 恋心盗まれて
 もっと ロマンス 私に仕掛けてきて・・・・
 この歌詞、作者のオリジナル?といったら、皆に笑われた。大橋純子の有名な歌だってねえ。
 それはともかく、聖子ちゃんはその涙を見てぐぐぐと主人公に親近感を持ってしまう。なぜなら、彼女は歌でもう一花咲かせたいと、かねがね思っていたの だ。 「私だって、まんざら捨てたものでは無いわ。夢がかなうかも」。
 こうして二人の「関係」が始まった。夢多き女と、夢とは無縁な男の「秘め事」。聖子ちゃんは、恋多き女でもあり、旦那は人材派遣が商売で何かと彼女を主 婦 のワクにはめようとして口うるさい。自由人の 聖子に「ツミ」がありやなきや?
 こんな調子で話をなぞっていくと徹夜になるのでこの辺で辞めるが、僕の答えは、聖子に罪は無い。
 か ねて作者の持ち味は、ペーソス・ウイット・エスプリだと思っていた。この前のストーリー、「人生は甘辛い」もその持ち味が生きていたが、今回もなかなかで ある。「不倫はもともと成立しない」という前提で書いたものです、と作者はいう。それには反論もあるが、シナリオに「一つの枷」をはめるのは、大賛成だ。
 「枷(かせ)」や「ワク」があってこそ、密度が増す。小泉さんだって一本に絞っているじゃないか。
 あ れもこれもと欲張りすぎるとロクナコトはない。一つの方向に絞りきった中で、どんな人間がどう動くかだ。もう一人、マンションオーナーのお嬢さん(といっ ても42歳の独り者)が、男にちょっかいをかける。もてすぎの感もあるが、それはパスするとして、ラスト、優勝者はプロへのチャンスがある「カラオケ大 会」が用意されていて、聖子とわがまま娘が対決するという周到な設定もある。もちろん、聖子は負ける。さて、二人は?
 とりあえず夢に生きる女と、とりあえずは現実しか見れない男の「ほろ苦い大人の恋」に、期待するや大である。


2.神山作品「あなたとどこかへ」(ストーリー)

 驚いた。男と女の設定は逆だが、なんとなくの作品のエキス・匂いが前の小俣作品と似ているのである。こちら の主人公は、30半ばのすし屋の後継ぎ。といっても、父親がまだ頑張っていて店の実験は握られている。客も父親についていて、中途半端な仕事ぶりだ。弟が 店を一緒にやっていて、彼のためにそのうち支店を出そうと思っているが、それも漠然とした思いだけだ。
 妻子もちで、マンションに家庭があるが、見合い結婚だしなんか一つ「手応え」が無い。毎日が、なんとなくすぎて行く。単調だ。
 そう、前作の「夢を持たない聖子ちゃん」が主人公なのだ。そんな男の前に現われたのが、かつての女友達、といっても口説いて振られた相手だが、今も飛行 機 のスチューワデスをしている依子ちゃん、32歳だである。
 彼 女はほとほと疲れている。パトロンがいるが、二人の関係は今や「腐れ縁」。いつまでも空を飛んでるわけにも行かない。といって、パトロンとどうとかという 情熱も無い。さあ、私これからどうしたら?おおまかに言えば、前作の「男寡」なのです。なんかこれからの人生に、確かなものを見つけたい二人。当然彼と彼 女は「そういう関係」になるのだが・・・。
 いはゆる「脱出」モノと言われるドラマのパターンがある。多くは主人公達がまだ若く、自分を発見しきれ ない場合である。だが、ここ数年、中高年の脱出願望が強くなり昔なら「いい年して」というまわりの反応をはばかって気持ちをセーブしたものだが、社会に規 範が無くなりいまや平気で中高年も自分に疑問をもち、若い人並みに「自己実現」を望むようになった。
 といって、誰でもがそう思うかといえば、やはりおおかたの人の常識は30半ばまでだらだらにしろ生きてきた時間に負けてしまうのだ。 「そんなにはした ない ことは、ちょっと」という訳だ。
 つまりこの話の問題点は、男がちゃんとした商売をやっていて、妻子もちで、日々の営みが退屈で、単調だからといって、簡単に女にのめりこめるか?という こ とだ。おまけに、なんかしっくり来なかったすし屋を、女と共同出資で出すという。この展開は、
主人公が設定の男である限り無理がある。
 36 歳で「今」を脱出するためには、上で言った大多数の、いじけた男たちの「うん、それなら俺もやれるかも」という、同意が必要となる。「そういうことなら、 分かる、分かる」というシンパシーが必要となる。何もシナリオが常識のご機嫌をとらなければ、といってるのではなく、常識をねじ伏せる、ここでも「枷」と いっていいが、「日常」からの反撃を物ともしないドラマの世界を、まず構築することだ。


3.近田作品「神様がくれた赤ん坊」(ストーリー4稿)

 3稿は、時間の関係で前回ゼミで僕だけが読んだ。この作品についてはいろいろいきさつがある。2稿で面白く思い、「シナリオ」にゴーといったが、何故か 作者は「いや、まだまだ」といってそのとうりにしない。いいイミでは納得のいかないことには手をつけられない性格なのだ。
 読んでいる人がほとんどなので内容は繰り返さないが、友人の警官を殉職させた主人公(やはり警官)がそのあとで、死んだ友人の愛妻にほのかな思いを寄せ る話だ。そこへ愛妻を案じた殉職警官が幽霊で出てくる。と書けば、幽霊を交えて男二人と女の「恋情と慕情と嫉妬と友情」の話とは誰も想像がつく。 
 何のためらうことがあることか。シナリオとストーリーとは違うのです。書いてるうちに、矛盾は一杯出てくるし、人間は考えたようには動いてくれないし、 また「アレレ」というすばらしいアイデアが浮かぶこともあるし、作品の中の人物が生きるようにシナリオも生きているのです。
 ストーリーも短いシナリオも読ませたのだから、まずは長い物を書いた方がいい。苦しんで「終わり」マークをつけるのです。一本目から傑作意識にとらわれ ては、いけません。





 アフターは、聖路加タワーのイタメシ屋へ。景色がすばらしいわ、と女性陣が言ってくれて、地元に呼んだ忠太郎も面目をほどこした。次回課題の、小沼シナ リオを配った。
 このまとめで3時間かかり、もう限界。何せ指一本の作業だから。新しくストーリーできた人は送ってください。それと、前回休んだ人は、野原ストーリー・ 貫目シナリオについて。今日来なかった人は、小俣・神山ストーリー(近田ストーリーは渡してないので)について感想を、「居残り」に。
 他の人の作品をどう読むかは、自分にすぐ帰ってくるものです。
 誤字・脱字の直し、なし。





次回の定期ゼミは、2005年9月3日(土)です。


東京芸術劇場5F/NO4会議室
時間は、いつものように、13:30〜17:00

教室が変わる場合があるので、入り口のボードで確認してください。

←Click  Here

上記作品のディスカッションはこちらで!!
ゼミで話し足りなかったことや後から思いついたこと
また、改めて作者に聞きたいことなどがありましたら
どんどん書き込んでください!



今までにみんなの書いたシナリオのリス トを整理してありますので、
それもご覧ください。

←Click!!(.xlsFile 8KB)
※上のアイコンをクリックすると、脚本一覧ファイルをダウンロードできます。


[ HOME ] [ BACKNUMBER ]

このページの無断転載・複製を禁じます。
Copyright(C)asimov. 2003 All rights reserved