リジェ〜再生の産声〜
ブランド アハン声 ちゅぱ音 運命
SARANG 一部有り

ハードボイルドアドベンチャー、その実…

ハードボイルドといえば、貧乏だけどポリシーを貫く訳ありの探偵主人公、
タバコをくゆらせながら「フッ」とか言ってみたり、
美人の依頼人とこましちゃったり、その依頼人がレイプされたりと相場が決まっておりまして、
全てがなぞったようなストーリー構成。
さらには俺からすると、ハードボイルドってジャンルは、
著者のくだらんハードボイルドに対する哲学が見え隠れしてイヤなんで、
全部のハードボイルドテキストが同じに見える上、その全てが嫌いということになります。

んじゃあ何で俺が「リジェ」を買ったかというと、
ハードボイルドってジャンルは、
愛と陵辱を両立させたエロテキストを書けるジャンルだから、という部分は認めているからです。
さらに、この「リジェ」では、
キャラクターの立ち絵をズームアップしたり、スクロールさせたりといった、
他のアドベンチャーゲームに無い演出を持たせることで、
テキスト描写に深みをもたらしているんではないか、と思ったからです。
俺のハードボイルド感を覆してくれる、そんな期待を胸にプレイを始めましょうか。
…ホントはサンプルCGに精液があったのが決め手なんだけど。

主人公は貧乏な私立警察官、食い扶持を求める為に怪しいメールの発信元を探ります。
私立警察官といえばよくわからないけど、単に逮捕権のある探偵です。
そんな架空の職業を持ってきて貧乏とくれば、
サイバーパンク風探偵物語とわかってゲンナリしますが、
まさにその通り、治安の悪化した近未来を舞台にストーリーが展開していきます。

が、ありきたりな舞台設定とは初見の印象、
舞台の中身を盛り上げる為のシチュエーション、
それに付随するテキストはなかなか魅せてくれます。
例えば、移動した先で老人が子供に射殺されます、前触れなく
特にイベントCGがあるわけで無く、
主人公は、「この町では良くある事」と言うだけで素通りするので、
フラグ立ては関係無い、ただ舞台を盛り上げる為に射殺されたようです。
これだけ見れば突拍子もないテキストですが、
その他にもタレコミ屋との駆け引きのような会話等もあわせると、
退廃的な雰囲気を目指し、それがさまになってるゲームと言えるでしょう。

そして、テキストをより盛り上げる為の装置にしてこのゲームの売りである「フィルム映像技法」、
立ち絵のキャラクターがズームアップしたりスクロールしたりする技法も、
この退廃的世界観の中では一役買ってます。
既存のキャラ切り替え方法のようにパタパタ変わるのではなく、
一つの流れで表情パターンが変わる様は、
キャラクターがより生かされている感覚が伝わってきます。

ただ、この演出、
キャラクターを独立させズームやらなんやらで表情を変えているからか、
CGが滲んだようなピンぼけたような塗りになってしまってます。
滲んだCGはエロシーンでも同様で、
サンプルCGで見せてくれたほどのエロCGではありません。
それに、テキストメインのゲームだからか、
エロシーン中の声のパートが薄くなっています。
淫語を喋るには喋るのですが、その淫語がとってつけた印象は拭えません。

ここまで読むと、
エロを楽しむゲームじゃなく、ストーリー及び雰囲気を楽しむゲームとお思いでしょう。
ハードボイルドアドベンチャーだから、その辺は覚悟してました。
途中に「猫耳カチューシャつけて『あぅあぅ』喋る魔法少女」が出るあたりに、
イヤな予感を抱きつつも。

退廃的世界観のハードボイルド世界に、カルトが出るのは結構ありがちです。
個人の崩壊が進んだ未来に、救済を求める手段としてカルト宗教が流行るというのは、
ストーリー上問題はありません、ありがちだとしても。
でもこのゲーム、カルトとオカルトの持つ微妙なニュアンスを履き違えてます。
カルト教団が呪術や催眠術を使うのにシチュエーション上問題ありませんが、
このゲームのカルト教祖さま、それ以外の魔法が使えます、
それも、SFっぽい世界観の中で「サンダー」や「バリアー」の類の。

さあ、ストーリーがおかしくなってきました。
初めて出会った女が、まだ何の証拠も無かった事件の黒幕をばらします。
メインヒロインの片方が、独り言のはずなのに今まで張られた伏線を全部ばらします。
あ、重要参考人が死にました、
あ、もう一人重要参考人が死にました、どっちも当然死ぬ間際にネタバレします。
そして魔法の応酬が始まりました。

怒涛の展開?
そんな生易しいものではないです、
今まで作られた雰囲気と伏線を、一言でパァにしてるんですから。
ご都合主義?
近いとは思いますが、それよりも、
シナリオライターが途中で力尽きたんじゃないでしょうか、安否が気遣われます。

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